サービスローンチ直後、私たちは大きな壁にぶつかりました。
私たちの想定では、「社長と無料でランチが食べられる」という魅力的なオファーに、すぐに求職者の登録が殺到するはずでした。
しかし現実は違いました。
登録企業がまだ数社しかなかったため、求職者からは「選べる企業が少ない」「本当に信用できるサービスなのか?」と疑念の声が上がったのです。
一方で企業側からは、「登録者が少なすぎて、コストをかけて掲載するメリットがない」と、掲載を断られる日々が続きました。
プラットフォーム事業で避けて通れない「鶏と卵」のジレンマです。
チームの士気が下がり始めたとき、開発担当が言いました。
「システムを改善する前に、まずは僕たち自身が営業じゃなく、『キャリ飯』の熱烈なユーザーになろう」。
私たちはすぐに戦略を変更しました。
営業活動を一時的にストップし、全メンバーが手分けして、「この社長に会ってほしい」と心から思える魅力的な企業を厳選。
直接足を運び、代表者の想いやビジョンを丁寧にヒアリングしました。
そして、その熱意を込めた読み物としての企業紹介記事を、メンバーがライターとなり一つ一つ丁寧に作成し直しました。
同時に、マーケティング担当は、大学のキャリアセンターや転職希望者が集まるSNSコミュニティに直接出向き、「まだ企業数は少ないが、掲載されているのは本当に価値あるトップ企業だけだ」と、サービスの「質」と「限定性」を熱心に伝え続けました。
この「質」に徹底的にこだわった泥臭い手動での営業と広報が転機となりました。
ある日、私たちが心血注いで取材した記事を見た求職者から「この社長に会いたい!」というオファーが届いたんです。
その熱意に触れた企業が「こんな素晴らしい人材が来るのか!」と感動し、追加で掲載企業を紹介してくれるというポジティブな連鎖が始まったのです。
私たちはこの苦労を通じて、「最高のサービスは、最高のコンテンツ(魅力的な企業と記事)から生まれる」ことを学びました。
『キャリ飯』は、今もその時の情熱と、利用者への感謝を胸に運営を続けています。
